製薬業界向けイベント登壇レポート
「メディカル領域におけるDX事業開発支援サービス~なぜ広告会社が支援するのか?~」

2025年4月23日

20254911日に開催された製薬&ヘルスケア業界向けイベント『ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ』にて、「メディカル領域におけるDX事業開発支援サービス~なぜ広告会社が支援するのか?~」と題して、株式会社博報堂メディカル ビジネス開発室室長 八角潤一、株式会社博報堂Paasons Advisory マーケティングプランニングディレクター 由利啓祐がセミナーに登壇いたしました。その内容をレポートいたします。

     
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DX事業開発支援で重要視していること

背景

弊社は広告会社でありますが、クライアントからのご相談内容に対して、広告コミュニケーションにとらわれない課題解決の手法が求められるケースが増加しています。

「VUCA」と呼ばれる「変化のスピードが早く、市場の境界線が曖昧な時代」がその根底にあり、様々な業界のお客様が必ずしも今まで積み上げた経験則が、そのまま適用できない状況に直面することが少なくないからであると考えています。メディカル領域も例外ではなく、医師、医療系企業、生活者/患者さんなどのステークホルダーそれぞれの中で起きる変化が絡み合いながらダイナミックな市況を作っていると言えます。

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やり方を変えながら進むプロセスの"初動"が重要

そんな市況においては予測が立てづらく、想定できない変化が起きる前提に立ち、「柔軟かつ迅速にやり方を変えながら進むプロセス」が重要になります。また、私たちはそのプロセスにおける"初動"がマーケティング領域だけでなく新規事業開発においてもその成否を大きく左右すると考えています。

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アウトカム志向での伴走

一方で実際にはプロセスの"初動"の重要性が見逃された状態です。クライアントから既に開発を済ませた、あるいは開発自体は決定した上で、お悩みをご相談いただくことが少なくありません。「開発したがユーザーにどんな価値があるのか明確にしたい」というように、本来開発の前に規定すべきことが疎かにされているが故に、プロジェクトのボトルネックに繋がっていることがほとんどです。それは得てして「アウトプット=プロジェクトを通じてつくる"モノ"」に過度に焦点をあててしまうことによるものです。弊社では本質的により重要な「アウトカム=新規事業のプロジェクトを通じて起こる具体的な変化」に焦点をあて、"初動"として「作る」前に「"アウトカム"志向で考える」ステップに注力することで、課題に対してブレのない成果を生み出すご支援を目指しています。

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DX事業開発における課題と打ち手

今回ご紹介するのは、博報堂 Paasons Advisoryと博報堂メディカルの強みを掛け合わせた支援パッケージです。⾮医療系企業による、医療ドメインにおける新たな製品やサービス開発の"初動"から伴⾛⽀援を行います。

4つの課題

これまで支援する中で、大きく4つの課題に対して打ち手を提供しています。

課題1. マーケティング関連のリソース不足

社内では調達が難しい場合に、マーケティングに関わる業務を代行する「拡張機能」としてクライアントとワンチームで協働します。先ほどご紹介した"初動"においてミッション/ビジョンの策定、新製品/サービスの価値規定を中心にマーケティング領域で培ったナレッジを還元します。また、現場ではステークホルダー全体での議論を通じた合意形成や、目指すべき方向性、価値を言語化していくことでプロジェクト推進を支援いたします。

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課題2. プロジェクトの進行方法がわからない

プロジェクトをどのようなステップで、どのような工程で進行させていくかイメージができないといった課題にも、弊社はアジャイルな伴走支援を行います。プロジェクトの方針と具体的なステップを定めた上で、その都度状況にあわせた「"アウトカム志向"で考える」過程を何度も往復しながら円滑なプロジェクトマネジメントを実現します。

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課題3. 医療業界の知識や競争環境に明るくない

新規サービスや製品を開発する際には、メディカルの専門知識や商習慣への理解が欠かせません。弊社はメディカルライターをはじめとした多数の医療専門スタッフが在籍しており、医療用医薬品専門の広告会社として、ローンチ業務やプロモーション支援などに携わってきた実績があります。また、医師を「⼀⼈の⽣活者」として捉えた調査を実施し、プロモーションや企画提案に活用しています。

このようにメディカルの専門知識とデータベース、そして複数のソリューションを掛け合わせることで、クライアントの皆様が直面する課題を解決へと導くご支援を行っています。

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課題4. AIを中⼼とする新しい技術を活⽤した開発の経験が少ない

生成AIを含む先端テクノロジーの活用は、事業開発における大きな武器となり得ます。弊社はメディカル領域でのDXを推進しており、202411月に経済産業省から「DX認定制度」の認定を取得しました。実際に、各社員がメディカルの専門性を活かし、生成AIを活用して課題解決に取り組んでいます。また、生成AIを利用するだけではなく、社内で使用する業務支援AIを自社内で開発して、日々の業務に利用しています。

さらに、こうした社内実績を踏まえ、メディカル領域に特化したRAGRetrieval-Augmented Generation)の開発支援も実施いたしました。ここでも"初動"である企画・要求定義段階を重視するアプローチが、スムーズな開発に結び付いています。

弊社はAIを活用したモダンな業務体制を整え、今後も多様なDXニーズに応えて参ります。

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社内開発の実績:AIメディカルレギュレーションチェックシステム

弊社では顧客の事業開発を支援するだけでなく、自身の事業開発も進めています。実際に、業界初となるAIメディカルレギュレーションチェックシステムを開発いたしました。本システムは医療用医薬品のプロモーションコンテンツが、日本製薬工業協会が定める「医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領」(通称:ブルーブック)に準拠しているかAIで自動的にチェックする仕組みです。また、人工知能学会に本システムのコンセプト論文を投稿し、特許を申請しました。

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メディカルライターのスキルセット

論文の中で弊社が提案するメディカルライターのスキルセットを3点ご紹介します。一つ目は「品質管理および規制遵守能力」、二つ目は「基本的なライティング能力および専門知識」、三つ目は「価値創造および設計力」です。中でも弊社が最も重要と考えているのは「価値創造および設計力」です。医療現場や生活者にとって真に意味のある医療コミュニケーションを生み出すこのスキルこそが、メディカルライターに求められる本質的な役割であると考えています。

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プロモーションコンテンツ制作の課題

しかし、弊社の内部調査によると、メディカルライターの稼働時間の約40%が品質管理や規制遵守といったメディカルチェック作業に費やされていることが判明しました。その大きな要因として、ブルーブックの各ルールが相互に依存し、複雑に絡み合っていることが挙げられます。高度な推論能力が要求されることから、チェック作業に多くの時間と労力が必要です。さらに、新薬承認までの期間短縮化やブルーブックの複雑化が進むことで、メディカルライターが本来注力すべき創造的業務や高度なライティングのための時間を確保しにくくなっています。チェック作業の負担増は、人材不足を引き起こす一因にもなっており、弊社だけではなく業界全体が抱える共通の課題となっています。

このような状況を踏まえると、AIを活用した自動チェックシステムの導入や、メディカルライターが高付加価値の業務に集中できる仕組みを整備することが、今後ますます求められてくると考えます。弊社はこの課題解決のため、AIの活用を通じて、メディカルライターが「価値創造および設計力」を最大限に発揮できる環境づくりに貢献してまいります。

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今後の展望

本システムについて、まずは社内利用を進め、既存業務の質と速さを向上、顧客への提供価値を高めます。同時に、今回ご紹介した課題は業界全体の課題ですので、弊社以外の皆様にもご利用いただける環境を整備します。

さらに、基本性能の改善や、各製薬会社様のローカルルールへの対応や、また、研究開発としてファインチューニングと強化学習にも取り組んで参ります。

まとめ

医療ドメインにおけるDX事業開発について、ご紹介しました。弊社は、"初動"の「考える」を重視しながら、設計・実装までご支援いたします。

メディカル領域で新規事業創出に取り組まれる企業様からのご相談をお待ちしています。また上記サービスならびに本セミナー内容に関してご興味がある場合は、博報堂メディカルまでお気軽にご連絡ください。

 

上記サービスならびに本セミナー内容に関してご興味がある場合は、博報堂メディカルまでお問い合わせください。



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